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2014年5月29日木曜日

【報告】5.23~25北海道4都市の、ふくしま集団疎開裁判連続講演会のレジメ

以下は、今月23日から、北海道の4箇所(旭川・札幌・苫小牧・室蘭)で行った「ふくしま集団疎開裁判」の講演会(講演者:弁護団 柳原敏夫)のレジメです。

レジメ

0、はじめに(自己紹介)
3.11まで原発や放射能に無知だった。3.11以後、なぜ疎開裁判に関わるようになったのか。 →「バイテク・センチュリー」との出会い

禁断の科学裁判=先端科学技術である遺伝子組換え技術の裁判に関わる中での「遺伝子組換えムラ」の住民たちとの異常な体験

1、福島原発事故 (1)、福島原発事故は2度発生する。
 1度目は「人間と自然との関係」の中で、2度目は「人間と人間との関係」の中で。


  科学技術(テクノロジー)の問題を、すべて自然科学の中で、つまり自然と人間の関係の中で解決できる、それさえうまくできれば、それで全部、結果オーライだと考える傾向があります(もちろん、それで解決できる問題もあります)。しかしそれは、科学技術の問題を、もっぱら自然と人間の関係でしか見ない発想であって、そこには人間と人間の関係の問題が抜けている。現実に、科学技術(テクノロジー)を左右し、それを押し進めたり止めたりする力が必ず作用していて、それが人間と人間の関係の力です。たとえば国家の力と か、経済の力とか。市民の力とか。そういう人間と人間の関係の中での力が、最終的に科学技術(テクノロジー)の方向が決まるので、そこを無視しては環境問題やテクノロジーの問題、安全の問題は解決できない。
だから、科学技術の災害についても、人間対自然という関係だけではなくて、人間対人間の関係を絶えず念頭に置かなければならないし、むしろ人間対人間の関係のほうが、根本である。(柄谷行人「世界史の構造」31~32頁。305~306頁参照)

2度目の「人間と人間との関係」の中で発生する事故とは、1度目の「人間と自然との関 係」の中で発生した事故がその後意図して操作(マインドコント ロール)されたものである。従って、その操作が発覚したとき、市民の科学技術とそれを運用・管理する人たちに対する疑心暗鬼・不信感は極大に達する。

但し、たとえ運良くその操作が発覚せず、市民の目を欺くことができたとしても、自然を欺くことはできない。どんなマインドコントロールも「人間と自然との関係」の前で無力である。自然は情け容赦なく人間を裁く。

そ の上、「人間と自然との関係」で、今日の専門化し、細分化し、分断化された科学技術では自然の全体像を正しく把握することができない。そのため、自 然を人工的に利用するにあたって生じる危険性についても正しく把握することができない。この意味でも、今日の科学技術は「人間と自然との関係」の前で無力 である(『安全と危険のメカニズム』補足より)。
参考->危険は人によって作られる! 共著「安全と危険のメカニズム」第3章「市民の科学への不信はいかにして形成されるか」第4章「座談会」184~187頁より)

(2)、「見えない、臭わない、味もしない、理想的な毒」を認識する視点:視差(ズレ)の中で考える。

さきに、私は一般的人間悟性を単に私の悟性の立場から考察した。今私は自分を自分のではない外的な理性の位置において、自分の判断をその最もひそかな動機もろとも、他人の視点から考察する。
 両者の考察の比較は確かに強い視差を生じはするが、それは光学的欺瞞を避けて、諸概念を、それらが人間性の認識能力に関して立っている真の位置におくための、唯一の手段である。(カント「視霊者の夢」)

A.時間的な視差:3.11以前と以後との対比

B.場所的な視差:チェルノブイリと福島との対比

C.人的な視差:「政府要人・自治体要人・原子力ムラ住民とその家族」と一般市民との対比 
  例 郡山市長 

※本日の検討
 
①.世界からみた福島原発事故(日本内部との対比)  
②.世界史から福島原発事故(百年前との対比)

2、世界からみた福島原発事故


①.菅谷昭松本市長14.4.24) 

  なぜ、今頃、こんなメッセージを表明したのか?


②.外国から 5人の代表的な声(2013年4~5月) 
         ファッション・デザイナー キャサリン・ハムネット
     スイス・ジュネーブ市長 レミー・パガーニ 
         人権活動家 ノーム・チョムスキー     
         フランス前環境大臣 コリンヌ・ルパージュ
    小出裕章(非日本的日本人)


  外国から無名の人々の声  イタリアからのメッセージ  
 なぜ、彼らはこのような声を発したのか?
 
③.ふくしま集団疎開裁判を報道するニュース


国内。テレビは2011年6月24日の申立時にTBSのNEWS23一社のみ。
    しかも、このときは、特集として詳しく報道。以後、一切なし。




国外。韓国、ドイツ、フランスの公共放送が取材・放送。  


④.福島の現実(2012年10月のジュネーブ国連でのスピーチから)


  日本政府の三大政策「情報を隠すこと」「事故を小さく見せること」「様々な基準値を上げること」
          チェルノブイリ事故から徹底して学んでいること。
          例 キエフの学童疎開→2011.4.19 20倍引き上げ

  健康被害の実態:小児甲状腺がんの検査結果

           ベラルーシの35倍14.2.7)->最新の5月19日の発表で40倍
           スクリーン効果論の「崩壊」確実(14.5.19)

           郡山保健所から配布の副読本「がんのおはなし
    最近の福島 福島市の中学校正門付近の線量            
           車窓の線量(磐越東線 引船~郡山)
 
 映画『シンドラーのリスト』を作ったあとのスピルバーグの発言
 「ホロコーストで起きていたことは、当時、チャーチルもルーズベルトも知っていた」(歴史の反復)

⑤.2013年4月24日の仙台高裁の決定(判決) 


  →画期的な事実認定(理由)と理不尽な結論(主文)との矛盾

⑥.松本子ども留学プロジェクトのスタート
一刻の猶予もならない子どもたちの救済を、市民の手で市民型公共事業としてスタート
 
3、戦争との対比
 大岡昇平の「レイテ戦記」
 

4、世界史から見た福島原発事故
 第一次世界大戦との類似性

5、「美味しんぼ」の言論抑圧問題

私の抗議文->自らは説明責任を果さず、少数意見の表現者には「断固容認でき」ないと抗議声明を出す福島県の言論抑圧に抗議する


※ 3つの主体の人権侵害、その結果、最大の被害者は、福島の「子どもたちの命と健康」


    作者の表現の自由 (1)、経験した事実(鼻血・除染) (2)、不確実な科学的事実(被爆と健康被害の関係)


    市民の知る権利(表現の自由は民主主義の基盤である「自由な言論と討論の広場」にとって不可欠)


    被害者である福島の人々の経験した事実や真実と信ずる見解を表明する自由
 「鼻血は事実」~福島の母親「美味しんぼ」言論抑圧に抗議
 
    最大の被害者である福島の子どもたちの命と健康という人権

2014年5月23日金曜日

【報告】21日の緊急記者会見と官邸前抗議行動の動画

予定通り、21日に福島のお母さんたちの証言による緊急記者会見と官邸前抗議行動が実施されました。
沢山のメディアの方々と沢山の皆さんのご参加、ありがとうございました。
スタッフ一同、大いに意気があがりました。

以下、その動画です。

「鼻血は事実」~福島の母親「美味しんぼ」言論抑圧に抗議(OurPlanet)

緊急記者会見 (ユープラン 三輪祐児撮影)

官邸前抗議行動(ユープラン 三輪祐児撮影)

大庭有二さん撮影の動画
【記者会見】
記者会見の趣旨説明(井戸弁護士)
本当のことが表に出ることが怖い (山本太郎 参議院議員)
お子さんの体調報告 (ふくしまのお母さま方)
会津放射能情報センター 片岡様のお話し
美味ぼう騒動をめぐるお母さんたちの声 (代読)

報道機関の方々からの質問
私たちの避難の進路妨害をしている (井戸川元双葉町長)
鼻血が出てもガレキは燃やします (大阪-ガレキ差し止め訴訟原告団 内海様)
予防原則に基づいたベストを尽くしてほしい (郡山から自主避難をした長谷川克己さん)
子ども達を救い出す社会を造りましょう(柳原弁護士)
この騒動は憲法を身近な問題として考える題材となっている (光前弁護士)

【官邸前抗議集会】   
ふくしまの方達が声を上げられなくなる状況を更に強めている   
事実隠しを止めろ、子どもを避難させろ(コール)   
府と市の幹部がビックコミックの中身をみせろとチェックした    
お母さんたちの何かおかしい思う気持ちを無視しないでほしい(会津若松の片岡さんと酒井
さん)
放射能健康診断の署名を集めています
本質的危険性をいつも見つめて運動していかなければならない (崎山比早子様)
琵琶湖に高濃度の放射性物質が不法投棄されていた(内海様)
利権のために被爆を隠すな(コール)
排ガスの放射能の測定は実験をしていないJIS規格だ(参加者)
3.11で裁判所は変わらなくていけなくなった (井戸弁護士)
福島の復興は土地の復興ではなく、命の復興だ (柳原弁護士)
放射能を政治的、社会的、報道的に見させない福島県 (郡山の井上さん)
  
国は人間復興を行え (コール)

2014年5月22日木曜日

【お知らせ】5.23~25北海道4都市で、ふくしま集団疎開裁判連続講演会

23日から、以下の4箇所で、ふくしま集団疎開裁判の講演会をやります。

問い合わせは主催の「福島の子どもたちを守る会・北海道」(電)090・6990・5447
->北海道新聞の紹介記事

以下は、室蘭でやった講演を報じる地元の新聞記事です。
 -> 室蘭民報の紹介記事

旭川会場
日時: 5月23日(金) 19:00 ~ 21:00会場: こども冨貴堂 2F
    旭川市7条8丁目通買物公園
参加費: 一般500円/高校生以下無料

講演者: 柳原敏夫(ふくしま集団疎開裁判 弁護団) 
主催: チーム「今だから」 問い合わせ:0166-25-3169
紹介HP->こちら

札幌会場
日時 :5月24日(土) 13:30~15:30
会場 :札幌市男女共同参画センター(北区北8条西3丁目エルプラザ )2階 環境研修室
※中央区北5西5-7 JR札幌駅下車すぐ TEL 011-231-2131
参加費 :500円
講演者: 柳原敏夫(ふくしま集団疎開裁判 弁護団)
主 催 :福島の子どもたちを守る会・北海道
共 催 :ほっかいどうピースネット
紹介HP->こちら

苫小牧会場
日時:5月 25日 (日) 10:00 ~ 12:00
会場 :アイビープラザ 学習室3(苫小牧市本町1丁目)
   地図->こちら
参加費 :500円 
講演者: 柳原敏夫(ふくしま集団疎開裁判 弁護団)
主 催 :未来ネット・苫小牧(0144-34-2385)
紹介HP->こちら
 
室蘭会場 
日時:5月 25日 (日) 14:30 ~
会場 :室蘭市中小企業センター
   詳細情報・アクセス->こちら
参加費 :300円 
講演者: 柳原敏夫(ふくしま集団疎開裁判 弁護団)
主催:原発なしで暮らしたい市民の会むろらん
共催:ピースネット北海道 苫小牧未来ネット
問い合わせ Tel.0143-43-2895 Fax.43-2783
紹介HP->こちら

2014年5月21日水曜日

賛同人・賛同団体の紹介(「美味しんぼ」問題)

以下の方から「美味しんぼ」問題の抗議行動に賛同を表明していただきました(随時、更新)。

野中ともよさん(NPO法人代表)

イデオロギーのたたかいでも
右と左のたたかいでも
お金持ちと貧乏人のたたかいでも ありません
これは いのちをまもるたたかいです

つまり この国が 
こどもを産み 
育てていくのに値する国になるのか ダメな国になるのか
その サカイメのたたかいなのだと思います
 
まず そんな大変な岐路に来てしまっているという 事実
その事実を 国の主人公である 私たち国民が知ることです
この知ることすら許さないぞ という
情報を好きに操ることが 権力を握ると云うことなのだ
『情報公開は絶対ダメ』『都合のよいことだけはOK』
その姿勢の 馬脚をあらわしはじめたのが
この『美味しんぼ』騒動なのだとおもいます

これにも ナンの反応も示さない国民であるとするならば
この国は 元首の思いドウリにコトをすすめるアジアの第二、第三の
独裁専制国家にむかって 驀進していくのでしょう

わたしは イヤです

子どもたち それは いま ここにある未来です 
これを守れない 守ろうともしない大人たちに
豊かで 平和な未来など 創れるはずがありません

『いのち』にとって 疑わしきは しっかりと疑い 
皆で共有して ほんとうの敵を 倒していくたたかいを
たおやかに繋がりながら すすめていかなければ
ほんとうに 悲しい国になりさがってしまうと
とても危機感をもって います

ひとりひとりの 私たちは 何も出来ない気持ちでいっぱいです
でも 繋がれば 何か出来るはず

ひとりひとりが 分断されて 悲しく辛い無力感の中にいる
フクシマの人々に繋がるのは 
『ダイジョウブだ!』『ダメだ!』との絶叫の前に
事実を広く共有すること 世界の知恵とも しっかりと繋がりながら

科学的に証明されていない! を論拠とするならば
この宇宙のことを 科学の方法論で証明できているのは
たったの4%でしかない事実を どうなさるおつもりか

現に わたしたち人類は いま 生きてここにあり 
地球も 太陽も べらぼうな速度で宇宙空間を進み 動いているのだから

いま わたしにできることを
いま あなたにできることから
いま わたしたちならできることを

どんなことでも ちいさなことからしか はじまらない
大きな変革は 
ちいさきことを ちいさくしっかりつないでいくことの先にしか
現れてこないのだから 


それを 信じて......


松崎道幸さん(医師)

私は内科の臨床医ですが、仕事の基本は、先入観なしに受診された方々の訴えを聞きとる事にあります。私たちの知識は未熟であり、それまでの知識をもとに断定できないことが沢山あります。今起きている事実に謙虚に向き合い、記録し分析する事が必要です。鼻出血問題についても、放射性微粒子が鼻腔粘膜に影響を与える事は十分考えられます。血小板減少症をもたらすような急性放射線障害の起きる線量でないから、鼻出血と原発事故は関係ないと「断定」することは、科学的な態度とは言えません。


◎ 山本太郎さん(俳優)

「根拠ない風評に国として全力で対応する」
総理と呼ばれているひとが発した言葉。

全力で対応する方向性が間違ってやしないか?

「低線量被曝の影響」が科学的、医学的にハッキリしないと言う国際的なコンセンサ
スの中で、
安全か危険かが解らない場合、危険側に立って対処する「予防原則」を無視し続ける
政府こそが
「風評被害」の原因だ。

「汚染水は完全にブロックされている」
「健康問題については、今までも、現在も、そして将来も全く問題はない、と言う事
をお約束いたします」

世界の舞台でドヤ顔で嘘を垂れ流す、総理と呼ばれる人こそが「風評被害」を生み出
す親玉の一人だ。

この圧力に屈することなく、声を上げ続けよう、表現を続けよう。

この国に生きる人々を切り捨てる事を決め込んだ権力者にとって、それこそが最大の
脅威なのだから。

◎ 神田香織さん(講談師) 

 心から賛同します。

◎ NPO「チェルノブイリへのかけはし

◎ 荒井晴彦さん(脚本家)
  
 賛同します。

◎ 小出裕章さん(学者・原子力工学

  「美味しんぼ」の件、ほとほと呆れています。
 鼻血が出たとか出ないとか、そんなことはどうでもいいほど些末なことです。
 今現在、放射線管理区域にしなければいけない地域に赤ん坊や子供も含めて棄てられているということこそが問題です。
 そのような場所で、住民たちは苦しんでいます。
 また、一方では棄てられてしまって逃げることもできない人々は、苦難を忘れたいとも思います。
 様々な意見を持った人たちの間で軋轢だって起こります。
 それらすべては国が法令を守らないために起きていることで、それこそ犯罪として非難しなければいけません。
 それなのに、犯罪を犯した政府の人間たちが、風評被害をまき散らして怪しからんなどと言い、それをマスコミが報道するなど、日本のマスコミはことの本質が分かっていません。
 原発に反対している人の一部の人たちも鼻血は非科学的だと、井戸川さんも含め鼻血が出たと言っている人を非難するなんて、頭がおかしいと私は思います。

◎ FoE Japan

【速報】21日18時半の緊急記者会見のIWJのネット中継は チャンネルはCh6です。

5月21日の以下の緊急記者会見を、IWJでライブ中継します。-->Ch6

        ********************

日時: 5月21日 18時開場・18時30分開始 (19時45分終了予定)
場所: 参議院議員会館 地下1階 講堂 (会館ロビーで当メンバーが受付をお待ちしています)
参加者:福島のお母さんたち
     山本太郎 井戸謙一(ふくしま集団疎開裁判弁護団)
     ノーム・チョムスキー(メッセージ)、キャサリン・ハムネット(メッセージ)
    アナンド・グローバー(メッセージ)
 主催: ふくしま集団疎開裁判の会

2014年5月19日月曜日

賛同のお願い(「美味しんぼ」問題)

「美味しんぼ」問題に対する抗議行動に市民の皆さんひとりひとりが参加し、賛同の意思を表明して下さい -->こちらから

以下は、そこへの書き込みを求める「 賛同のお願い」です。

       *****************************


賛同のお願い
ふくしま集団疎開裁判の会

今回の「美味しんぼ」問題では、「福島の真実」に関する作者の「表現の自由」と私たち市民の「知る権利」が損なわれたのみならず、苦しみの中で救済を求めている福島の多くの人々の「真実、そして真実と信ずる見解を表明する自由」がますます奪われ、その結果
社会の最も弱い立場にいる福島の子どもたちの「命と健康」という最も尊い人権が踏みにじられる結果となりました。私たちはこの事態を決して容認することができず、抗議の声をあげました(福島県に対する抗議文->こちら)。
以下の抗議の趣旨に賛同いただけるようでしたら、賛同人としてご返信いただけたら幸いです。またその際、一言、賛同メッセージをお寄せいただけたら幸いです。

まえがき

 福島原発事故は日本史上最悪の人災です。その1ヵ月後、文科省は子どもたちを救助するのではなく、学校安全基準をいきなり20倍に引き上げ、福島の子どもたちを「福島収容所」に閉じ込めました。これは国際法に照らし「人道に対する罪」に該当する、戦後日本史上最悪の人権侵害です。この政府の人権侵害行為をただすため、福島の14人の子どもたちが自分たちを安全な場所で教育をさせて!と裁判所に訴えました。これが「ふくしま集団疎開裁判」(以下、疎開裁判と略称)です。

 証拠を丹念に積み重ねて判断する近代裁判の原理に従えば疎開裁判は負ける筈のないものでしたが、負けました。その理由は裁判所に提出した証拠が不十分だったからではなく(事実について裁判所は私たちの主張を全面的に認めたからです[1])、裁判を支援する市民の声が不十分だったからです。それは「福島の真実」を伝える疎開裁判はマスメディアから徹底して無視され、その結果、多くの人たちは「福島の真実」を伝えようとする疎開裁判の存在すら知らず、裁判支持の声を寄せることすらできなかったからです。もし表現の自由の中心である市民の「知る権利」が正常に機能し、疎開裁判が伝える「福島の真実」を多くの市民が知る中で「子どもたちを救え」という多くの声があがれば、疎開裁判は間違いなく勝ち、子どもたちの救助は大きく前進したのです。

 市民の「知る権利」の実現という反省を踏まえ、私たちは今、裁判所だけでなく、多くの市民に「福島の真実」を伝える第二次疎開裁判の提訴を準備中でした。

本 題

 その矢先、「福島の真実」を伝えようとする情報がマスメディアに登場しました。本年4月28日と5月12日発売の雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載の漫画「美味しんぼ」です。その内容は、健康被害にしても、除染の効果にしても疎開裁判に関わってきた者からみて常識ともいうべき、ごくつつましいものでした(脚注の通り、仙台高裁の判決は「郡山市の子どもは低線量被ばくにより生命・健康に由々しき事態の進行が懸念される。」「除染技術の未開発、仮置き場問題の未解決等により除染は十分な成果が得られていない。」と明言したからです)。しかし、これが「福島収容所」の完成を目指す政府(環境省)、閣僚、自民党、福島県、双葉町の神経を逆なでし、彼らから「風評被害を助長するものとして断固容認できず」と激しく非難され、一部マスコミからヒステリックに報道されました。

周知の通り、現代の科学水準では放射線による被ばくと健康被害の関係(因果関係・メカニズム)は大部分が未解明です。つまり安全とも危険とも断じることはできない。その結果、安全と危険の間で、灰色に関する様々な見解があるのは当然です。にもかかわらず、今回、権力者である政府や福島県は、彼らにとって「不都合」な見解を根拠のない噂=風評と断定して、およそ議論の余地なしとしてマスメディアの場から排除しています。これは表現の自由に対する重大な抑圧です。その結果、マスメディアから情報を得ている多くの市民は、政府や福島県にとって「不都合」な見解を「知る権利」を奪われ、相対立する複数の見解同士の吟味を通じて、最適な見解を選択するための「自由な言論と討論の広場」が機能しなくなります。これは「自由な言論と討論の広場」を土台とする民主主義にとって、息が根が止められる危機以外のなにものでもありません。

のみならず、今回の騒動を通じ、「鼻血が出た」という目の前で経験した事実すら口にすることを憚かれる風潮が強まっています。その理由は「鼻血が出た」という事実によって、それが「放射線による被ばくと何かしらの関係があるのではないか」という疑問が提起され、この灰色の問題について率直な討論が起きることを極度に恐れ、これを未然に排除するためです[2]

「鼻血が出た」は疑いようのない経験的事実です。それが被ばくによるものではないかという疑いも理性のつぶやきです。これらを封じ込めようとする社会はもはや民主主義社会を標榜する資格はありません。

結論(賛同のお願い)
 以上の言論抑圧の結果、いま福島では、放射線による被ばくと健康被害の関係について、そして「鼻血が出た」という経験的事実すら、政府と福島県の見解以外の見解を表明し吟味する場所が以前にも増して奪われ、「一見解」独裁の社会になっています。その結果、最大の犠牲者は言うまでもなく福島の子どもたちです。事実(経験的事実も科学的事実も)をねじ曲げて、「福島は安全である」という非科学的な見解を子どもたちを救助しない最大の大義名分にしているからです。

 もともと犯罪と分かっていても政府が子どもたちを救助しないことに決めたのは3.11で足踏みした原発の再稼動,輸出を再び推進するためです。そのためには「事故を小さく見せる」ことが至上命令であり、この課題にとって最大の障害が「被ばくによる子どもの健康被害」です。3.11以後も「子どもたちにとって福島は安全」であり、子どもたちの健康にも環境にも変わりがない(健康被害が発生しても被ばくとは関係ない)と言い続けることが絶対の要請であり、子どもたちの集団疎開はタブーだからです。この方針を堅持するためには言論抑圧さえ辞さない、それが今回の「美味しんぼ」事件の本質です。
これに対して、私たちは、これが作者の「表現の自由」と私たち市民の「知る権利」に対する重大な侵害であることはもちろんのこと、苦しみの中で救済を求めている福島の名もなき多くの人々の「真実、そして真実と信ずる見解を表明する自由」に対する侵害、その結果、何よりも第一に、社会の最も弱い立場にいる福島の子どもたちの「命と健康に生きる権利」に対する許しがたい侵害であるとして、抗議の声をあげました(福島県に対する抗議文->こちら)。

今月21日には、参議院議員会館で、福島の人々から「福島の真実」に関する見解を表明する場を設け、「美味しんぼ」の表現が根拠のない噂=風評かどうかを検証し、政府や福島県の言論抑圧の是非・意味について議論を深める予定です(詳細->こちら)。

「福島の真実」に対する言論抑圧は私たちの民主主義に対する3.11以来最大の事件です。言論抑圧を許し、このまま福島の人々とりわけ社会の最も弱い立場にいる子どもたちが「福島収容所」に閉じ込められるなら、福島の未来のみならず日本の未来もありません。社会の最も弱い立場にいる子どもたちをこれほどまでに無惨に取り扱う社会は道徳的に腐敗し切っていると言わざるを得ないからです。


参考:ふくしま集団疎開裁判の会の ブログ->こちら
                 HP ->こちら


[1] 具体的には次の通り(2013年4月24日の仙台高裁判決。詳細->こちら)。
◯郡山市の子どもは低線量被ばくにより生命・健康に由々しき事態の進行が懸念される。
◯除染技術の未開発、仮置き場問題の未解決等により除染は十分な成果が得られていない。
◯被ばくの危険を回避するためには、安全な他の地域に避難するしか手段がない。

[2] 予防原則を本来の用法である人権侵害や環境破壊を未然に防止するために使うのではなく、正反対に、人権侵害を確実にするために予防的に使うもの。

速報【抗議アクション】「自由な言論と討論の広場」に「美味しんぼ」問題に対する皆さんの率直な思い・考えを表明して下さい!!

「美味しんぼ」問題抗議アクション-->こちらから

1、「美味しんぼ」問題とふくしま集団疎開裁判の切っても切れない関係
 
 一部の方から、今回の「美味しんぼ」問題とふくしま集団疎開裁判がどんな関係があるのか分からない、無関係ではないかという声があがっています。
 結論だけ言うと、「美味しんぼ」問題は、いわばふくしま集団疎開裁判のミット(グローブ)の真ん中に直球で投げ込まれた超特大ボールです。この裁判が抱える中心的問題をこれほどストレートにぶつけてきた事件は今までなかったからです。
 その詳細は->こちらの「まえがき」

2、 皆さんの率直な思い・考えを表明のお願い

 今回の「美味しんぼ」問題は「福島の真実」に関する作者の「表現の自由」の抑圧にとどまらず、「福島の真実」を渇望する市民の「知る権利」を奪うという民主主義の根本を揺るがす由々しき問題です。
その一方、この言論抑圧により、苦しみの中で救済を求めている福島の多くの人々の「真実、そして真実と信ずる見解を表明する自由」が奪われ、何よりも第一に、社会の最も弱い立場にいる福島の子どもたちがもの言えぬまま「命と健康」という最も尊い人権が踏みにじられる結果になるという深刻な問題です。

私たちは、この事態を断じて認めることはできず、福島県に対する抗議文の送付をはじめとする抗議の声をあげました。
政府の過ちを最終的にただせるのは私たち市民の力です。

そのために、私たちが準備した「自由な言論と討論の広場」に、「美味しんぼ」言論抑圧問題に対する皆さまの声をお寄せ下さい。皆さまのひとりひとりの声が政府と自治体の過った姿勢をただす力になります。

そこでは、むろん「なにふざけたこと言ってんだよ!元双葉町長の爺の被爆量はいくらなんだよ?」といった罵詈雑言を期待するものではありません(とはいえ、これをただちに削除するような排除はしません)が、同時に、この問題を「閣僚の批判ぐらいで言論抑圧?」や「事実と異なる事を否定」しているだけといった民主主義国家における思想統制(マインドコントロール)のやり方について、もっともっと深く学ぶ必要があります。

政府の過ちをただすために、また私たちが、様々な マインドコントロールに惑わされず、真に自立した市民として自己統治できるようになるためにも、一人でも多くの皆さんに、この「自由な言論と討論の広場」に参加していただくことを切に願うものです。



 


2014年5月18日日曜日

【アクションのお知らせ】5.21官邸前抗議行動のお知らせと参加の呼びかけ

 ブログ(5月15日)でお知らせしました緊急記者会見・市民集会 (参議院議員会館 地下1階 講堂に変更)のあと、引き続き、官邸前で、市民による抗議行動を行います。
 わたしたち一人一人の抗議の声、意思が政府の過ちをただす源泉です。その声と意思がつながることが最強の力になります。
 日本を政府に都合のいい「一見解」独裁社会にしないためにも、みなさまのご参加をお待ちしています。

■ 緊急記者会見・市民集会 => ここから
 
■ 抗議行動
日時: 5月21日 20時15分開始 (約1時間の予定)
場所: 官邸前
主催: ふくしま集団疎開裁判の会

2014年5月15日木曜日

【速報】5.21福島県に抗議する緊急記者会見・市民集会のお知らせと参加の呼びかけ→IWJ・CH6

【速報】当日のIWJのネット中継は チャンネルはCh6です。
会場が、当初の3倍広い、190席以上の講堂に変更となりました。

 4月28日・5月12日「週刊ビッグコミックスピリッツ」の「美味しんぼ」の表現に対し、福島県が表明した抗議文『週刊ビッグコミックスピリッツ「美味しんぼ」に関する本県の対応について』に対し、本日(5月15日)、下記の4団体が抗議を福島県に申し入れました。
 会津放射能情報センター
 子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
 子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト・郡山
 ふくしま集団疎開裁判の会
 
 しかし、その後も、「美味しんぼ」の表現に対する政府閣僚、政治家からの抗議、批判が相次ぎ、それを「王様の飼い犬」たちが「鼻血、聞いたことない」などとヒステリックに報道しています。
「福島の真実」の可能性を持つ少数意見を、このように頭から根拠のない噂=風評として葬り去ろうとする排除の姿勢は、表現の自由に対する由々しい侵害であり、民主主義の基盤である「自由な言論と討論の広場」を破壊する言論の最悪の抑圧です。

そこで、福島県に対する抗議に続いて、5月21日、参議院議員会館で緊急記者会見を開催します。
その場で、3.11以来、いわれのない鼻血、免疫力の低下、慢性疲労症候群、めまい等で苦しんできた福島の人々の声を日本と世界に伝えたい、また、ノーム・チョムスキーやキャサリン・ハムネットなど世界の良識ある人たちが、今回の騒動をどう見ているのか、報告したいと思います。

政府の過ちを最終的にただせるのは私たち市民だけです。
私たちと一緒につながりましょう。
みなさまのご参加をお待ちしています。

日時: 5月21日 18時開場・18時30分開始 (19時45分終了予定)
場所: 参議院議員会館 地下1階 講堂(変更しました) (会館ロビーで当メンバーが受付をお待ちしています)
参加者:福島のお母さんたち
     山本太郎 井戸謙一(ふくしま集団疎開裁判弁護団)
     ノーム・チョムスキー(メッセージ)、キャサリン・ハムネット(メッセージ)
    アナンド・グローバー(メッセージ)
 主催: ふくしま集団疎開裁判の会

 抗議文は => こちらから

【声明】漫画「美味しんぼ」の表現の自由を抑圧する福島県に抗議する


 「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号の「美味しんぼ」の表現に対し、福島県が表明した抗議文『週刊ビッグコミックスピリッツ「美味しんぼ」に関する本県の対応についてに対し、本日、ふくしま集団疎開裁判の会は、以下の抗議を福島県に申し入れました。 

抗議文

 周知のとおり、人権のカタログにおいて最も重要な1つが表現の自由です。世界最初の人権宣言である米国のヴァージニア人権宣言もこう宣言しました「言論出版の自由は、自由の有力なとりでのひとつであって、それを制限するものは、専制的政府といわなくてはならない」(12条)。重要なことは、表現の自由を保障する意義があるのは、政治的、学問的権威に盲従する自由ないし賛成する自由のときではなく(そもそも制限されることがない)、こうした権威を批判する自由ないし反対する自由つまり少数者の意見のときです。表現の自由を保障する真髄とは、「権威の座にある人たちの気に食わない意見を発表する自由」を保障することにほかなりません。

 去る4月28日と5月12日に発売された雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」に連載の漫画「美味しんぼ」に福島県双葉町の前町長や福島大学の准教授が実名で登場し発言した内容をめぐって物議をかもしています。
 およそ良識を備えた人なら、次の認識は共有できるものです。「被ばくによる人体への影響は、いまも科学的に十分解明されていないことが多くあり‥‥内部被曝によって起こる病気や症状のほとんどが、明らかに外部から被曝していない人にも発症するものだということです。それでいて、原因が被曝によるものだと特定する検査方法が確立されていませんから、病院に行ってもよほどのことがない限り、それが被曝によるものだと確定診断されることはありません」(1991年から5年半チェルノブイリに医療支援活動を行った菅谷昭松本市長「原発事故と甲状腺がん」52頁)

 被ばくと健康被害の関係が科学的に十分解明されていないとは、或る健康被害が発生したとき、現時点の科学ではそれが被ばくの影響である(危険)とは断定できず、影響がない(安全)とも断定できないことを意味します、つまり危険の可能性を帯びた灰色だということです。それが今日の科学の到達点であり限界です。その結果、この「灰色の評価」をめぐって、限りなく黒(危険)に近い灰色から、限りなく白(安全)に近い灰色まで複数の見解が生じ得ることになります。

 前述の「美味しんぼ」に紹介された双葉町の前町長や福島大学の准教授の見解も今日の科学の限界を踏まえて、自身の被ばく体験と同様の境遇に置かれた市民たちから得た情報から導かれる範囲で、自身の見解を述べたものであって、根拠のない噂=風評ではありません。事実、被ばくの鼻血と関係を明言する専門家(西尾正道北海道がんセンター名誉院長)もいれば、除染の効果が十分上がらないことがチェルノブイリで証明済みであることもつとに指摘されている専門家も存在します(菅谷昭松本市長「これから100年放射能と付き合うために」67頁以下)。

 しかし、福島県は、この「灰色の評価」をめぐって、福島県の見解と異なるというだけで、これらの見解を根拠のない噂=風評と決めつけ、「本県への風評被害を助長するものとして断固容認できず」と非難しています(->こちら)。
それは前述した「権威の座にある人たちの気に食わない意見を発表する自由」を保障しないことにほかならず、表現の自由に対する重大な侵害です。
のみならず、双葉町の前町長や福島大学の准教授の見解は彼らの個人的な見解にとどまらず、世界で最も過酷な「福島の現実」と向き合おうとしている多くの人たちにとって注目し共感せずにおれない重要な見解です。福島県の非難は、こうした人々の声を上げる自由をも抑圧するものであり、民主主義社会の基盤である自由な発言と討論の広場を奪う結果になっているという由々しき事態を深く自覚すべきです。
 福島第一原発事故の後、福島の人たちの間で、鼻血が多発したのは明白な事実です。そのことについては多くの記録があります。そして、人々がその原因が放射能ではないかと考えたのも当然のことです。福島県が今回公表された見解は、今、福島で、放射能に対する不安を抱きながら生活している人たちが、自由な意見表明をすることを抑圧する結果を生じさせます。それは、福島の人たちを二重に苦しめるものです。「物言えば唇寒し」の社会を作ってはなりません。

以上より、私たちは、福島県のかかる侵害行為は断固容認できず、ここに厳重な抗議を表明すると共に、ただちに福島県の抗議を撤回することを求めるものです。
                                以 上