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2012年12月2日日曜日

【意見表明】福島で子どもたちのマラソン大会を強行した主催者・後援者らは全員、国際刑事裁判所の被告人席で裁かれるべきである(柳原敏夫)


 本日2日、福島県南相馬市で、「復興記念」と称して、子どもたちを参加させて「野馬追の里健康マラソン大会」が2年ぶりに≪雨天決行≫という不退転の決意の中で開催されました。
 これに対し11月30日、「市民と科学者の内部被曝問題研究会」から、このマラソン大会の開催の即時中止を求める抗議声明が出され、関係者に送付されました(以下の書面)。
                            
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その理由は、以下の通りです――市民の測定によればコースの場所によっては年14mSvあり、南相馬市が提供する線量データでも最高年6mSv以上、最低で年1.8mSvの高線量であり、そのような場所でマラソンという呼吸が激しくなる運動をする場合には被ばくの危険性がさらに高まることは3.11直後に被災地に入った米軍も警告しているとおり、よく知られた事実だからです。この、子どもたちに激しい呼吸を伴うマラソンを長時間、高線量地域で走らせることが極めて危険なことを南相馬市の市長、教育委員会はじめ関係者が知らない筈がなく、従って、このマラソン大会によって、子どもたちに今すぐか将来かを問わず健康被害が出た場合には彼らの刑事責任が問われる「殺人行為に匹敵する」ほどの重大行為である、と。

 この抗議声明について、以下、私の感想を4つ述べます。
1つ目は、本来、国と自治体は子どもたちを安全な環境で教育するという憲法上の義務を負っています。従って、原発事故により地域の空間線量が年1mSv以上に汚染されたにもかかわらず、そこから子どもたちを集団避難させ教育を実施しない場合、「避難させない」という不作為が子どもに対する虐待行為=違法行為となります。なぜなら、もし人が溺れているとき、救助義務を負う人が救助せず傍観していたら、それは不作為による殺人であり、「何もしない」だけでも法律上の責任が問われますが、国や自治体が「避難させない」不作為はそれと同じことだからです。ところが、本件はそんな生易しいものではありません。南相馬市は「何もしない」どころではない。危険な地域で、マラソン大会という危険な活動をやらせるという子どもたちを積極的に危険な目に遭わせている。たとえて言えば、沈没する船に閉じ込められた子どもたちを、救助も何もしないのではなく、子どもたちを海に突き落とすような真似をしている。その虐待としての悪質性、残虐性は群を抜いています。

2つ目は、この抗議声明は、過度の被ばくにより子どもたちに健康被害という結果が出た場合に刑事責任を問題としていますが、刑事責任は結果が出た場合に限定されません。結果が発生しなくても、結果の発生のおそれのある行為についても刑事責任が問われるからです(未遂罪といいます)。被ばくから現実の健康被害の発生まで時間がかかる場合であっても、マラソン大会のように過度の被ばくが明らかに深刻な内部被ばくをもたらし、それがDNA等の深刻な破壊をもたらすことが確実である以上、その結果、将来、何らかの健康被害の発生をもたらすおそれがあると判断される場合には、未遂罪が成立します。ミサイルが発射されてから目標物に到達するまでたとえどんなに時間がかかったとしても、「ミサイル発射」こそ危険な行為と考えられるのと同じことです。

3つ目は、今回の場合、南相馬市の責任は危険なことを知らないでやった「過失責任」ではありません。南相馬市にも高名な専門家がアドバイザーとしており、マラソン大会がどれほど危険なものかを彼らは重々承知の上で実施しているからです。これを危険なことを知ってやった「故意責任」と言います。この抗議声明が、過失致死罪ではなく、故意責任である「殺人行為に匹敵する」と表明したのは決して誇張ではなく、まさしく正当です。のみならず、南相馬市は、単に危険なことを知っているだけでなく、「復興」の御旗を掲げてこれをしゃにむに突き進むために、「殺人マラソン大会」を「健康マラソン大会」と言いくるめて、意図的に子どもたちを危険な目に遭わせています。その意味で、彼らの故意責任の悪質度は飛びぬけて悪質と言わざるを得ません。

4つ目は、以上から当然のことですが、この最上級の犯罪行為は関係者一同が厳正に裁かれるべきです。そのためには、国内だけではなく、国際的にも裁かれるべきです。なぜなら、国内だけならうやむやにされる恐れがあるからです。他方、原発事故は「国境なき人災」であり、それによる人々の重大な被害と人権侵害は国際社会全体の関心事とならざるを得ず、それに関して発生した重大な犯罪(原発事故そのものに由来する一次的な犯罪に限らず、今回のマラソン大会のように、原発事故から派生した二次的な犯罪も含む)は「罰せられることなく放置」されてはならないからです。そのために、「これらの犯罪を行なった者が処罰を免れることに終止符を打ち、もってそのような犯罪の防止に貢献することを決意して」、2003年に国際刑事裁判所が創設されたからです(→詳細は後述の参考)。
        オランダ・ハーグの国際刑事裁判所
       出典「ウィキメディア・コモンズ」より 
        
国際刑事裁判所が裁く犯罪の1つが「人道に対する罪」です。この「人道に対する罪」の中に「その他の同様の性質を有する非人道的な行為であって、身体又は心身の健康に対して故意に重い苦痛を与え、又は重大な傷害を加えるもの」があり(「国際刑事裁判所に関するローマ規程」7条1項ラスト)、南相馬市の「健康=殺人マラソン大会」がこれに該当する可能性があります。
つまり、本件のような悪質な犯罪行為こそ、その抜本的な再発防止のために、本来、国際刑事裁判所の法廷で関係者一同が厳正に裁かれるべきなのです。

まとめ
これまで、福島原発告訴団の人たちの努力により原発事故そのものに由来する一次的な犯罪(過失責任)の責任追及がなされてきました。しかしこれからは、事故後の、「事故を小さく見せる」ため、或いは「復興」という名目で行なわれる二次的な犯罪(故意責任)が決定的に重要です。なぜなら、マラソン大会にせよ、除染作業にせよ、中間貯蔵施設問題にせよ、それらは被ばくにより住民に健康被害が及ぶことを分かっていて、回避することが十分可能にもかかわらず、敢えて実施されるという点で故意のそれも悪質極まりない故意の犯罪であり、なおかつ、くり返し、或いは継続的に実施されるため、住民はその都度過剰な被ばくを余儀なくされる現在進行形の犯罪だからです。これを根絶するためには、機能不全に陥っているおそれのある国内司法だけではなく、本年9月に南アフリカのツツ元大主教がやったように(下の参考(2))、速やかに、厳正中立な国際法上の裁判所による正しい裁きを求める必要があります。様々な圧力を受けている国内司法も、国内世論の監視だけでなく、国際法上の厳正中立な裁きを後ろに控えてこそまともな一歩が踏み出せるのです。
                              (12.12.02 柳原敏夫)
参考
(1)、国際刑事裁判所とは
国際刑事裁判所は、2003年、国際社会にとって最も重大な4つの犯罪(a集団殺人罪〔ジェノサイド〕、b人道に対する罪、c戦争犯罪、d侵略の罪)を防止するため、これらの犯罪の責任者を訴追し、裁くための常設の国際法廷として創設されました。国連創設以来50年間の悲願でした(→国際刑事裁判所の歴史)。竹島問題でも話題になった国際司法裁判所が当事者となりうるのは国家のみで、個人や法人には資格がないのに対し、国際刑事裁判所は個人の国際犯罪を裁くものです(→国際刑事裁判所)。

(2)、国際刑事裁判所の精神
国際刑事裁判所の精神は、1998年、その創設を決定し採択された「国際刑事裁判所に関するローマ規程」の次の前文に見ることができます(→ローマ会議)。
「20世紀に何百万人もの子どもたち、女性及び男性が、人類の良心に深い衝撃を与えた想像を絶する行為の犠牲になったことに留意し‥‥」
「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪は、罰せられることなく放置されてはならないこと‥‥を確認し、これらの犯罪を行なった者が処罰を免れることに終止符を打ち、もってそのような犯罪の防止に貢献することを決意して‥‥以下の通り合意に達した。」(前文)
さらに、時効について次のように定めています(29条)。
「本裁判所の管轄権に属する犯罪は、いかなる消減時効または出訴期限にも服さない。」
すなわち、国際刑事裁判所は
何よりも第一に、子どもたちが想像を絶する行為の犠牲になったことを忘れない、
そして犯罪者は決して見逃さない、時効で訴追が免れることもない、犯罪者はいつまでも、どこにいても犯罪者、世界中の人々の手で必ず追及する。
本年9月、ノーベル平和賞(1984年)を受賞した南アフリカのツツ元大主教がブレア元英首相とブッシュ前米大統領を2003年のイラク戦争開戦の刑事責任を問い、国際刑事裁判所に訴追するよう呼び掛けました。(「時事通信」2012/09/03
「イラクで失われた人命への責任を負う者は、ハーグで現在、責任を問われているアフリカやアジアの指導者らと同じ道を歩むべきだ」

(3)、国際刑事裁判所が裁く「人道に対する罪」とは、
「国際刑事裁判所に関するローマ規程」7条で、次のように定義されています。今回、注目するのはアンダーラインを引いた箇所。

第7条 人道に対する犯罪
1 この規程の適用上、「人道に対する犯罪」とは、文民たる住民に対する攻撃であって広範又は組織的なものの一部として、そのような攻撃であると認識しつつ行う次のいずれかの行為をいう。
(a) 殺人
(b) 絶滅させる行為
(c) 奴隷化すること。
(d) 住民の追放又は強制移送
(e) 国際法の基本的な規則に違反する拘禁その他の身体的な自由の著しいはく奪
(f) 拷問
(g) 強姦、性的な奴隷、強制売春、強いられた妊娠状態の継続、強制断種その他あらゆる形態の性的暴力であってこれらと同等の重大性を有するもの
(h) 政治的、人種的、国民的、民族的、文化的又は宗教的な理由、3に定義する性に係る理由その他国際法の下で許容されないことが普遍的に認められている理由に基づく特定の集団又は共同体に対する迫害であって、この1に掲げる行為又は裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を伴うもの
(j) 人の強制失踪
(j) アパルトヘイト犯罪
 その他の同様の性質を有する非人道的な行為であって、身体又は心身の健康に対して故意に重い苦痛を与え、又は重大な傷害を加えるもの
2 1の規定の適用上、
(a) 「文民たる住民に対する攻撃」とは、そのような攻撃を行うとの国若しくは組織の政策に従い又は当該政策を推進するため、文民たる住民に対して1に掲げる行為を多重的に行うことを含む一連の行為をいう。
  ‥‥(以下、略)

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